このたび、台湾大学出版中心より本を出版いたしました。

木下知威 編『伊沢修二と台湾』(台大出版中心 日本学研究叢書第29輯) 524頁、2018年。ISBN:978-986-350-282-1

台湾では、台大出版中心よりご注文を承っております。日本国内では、文生書院よりご注文を承っております。

ぜひお手にとっていただき、日本と台湾の関係を考えるにあたって外せない伊沢修二の存在と、伊沢修二研究の最前線をお確かめ下さい。
以下、概要と目次をご紹介します。


 

・概要

日清戦争の講和条約を経て、割譲された台湾を治めるべく降り立った人たちのなかに、一人の男性がいた。その名を伊沢修二(いさわ・しゅうじ、1851-1917)という。伊沢は文部省と台湾総督府に勤務することで教育行政に関わり、または国家教育社で教育の啓蒙をおこない、楽石社をひらいて吃音矯正事業を推し進めた。伊沢は、近代日本における国民の言語の成立を検討するさいに欠かすことのできない人物である。伊沢はその重要性から多くの研究がされてきたが、日本と台湾、ひいてはアジアという視点に立脚した総合的な研究はほとんど行われてこなかった。

本書はこれらの課題に着目し、二部で構成されている。第一部では、伊沢の多面にわたる業績についての諸研究を総合的に検討する。第二部では学問領域を超えて伊沢と日本・台湾をめぐる言語と教育の諸課題を明らかにするべく、吃音矯正、盲唖教育、乃木希典遺髪碑の建立計画、台湾語教育、中国語教育、伊沢沒後の顕彰活動を主題にした五本の論文で構成されている。


・プレビュー(「はじめに」)


・目次

はじめに — 日本と台湾における伊沢修二(木下知威)

一、激情する伊沢
二、伊沢と台湾
三、問題の所在
四、本書の構成

第一部 日本と台湾における伊沢修二研究の現在
第一章 伊沢修二資料の全体像(木下知威)

一、 はじめに
二、 台湾における伊沢修二資料
三、 日本における伊沢修二資料
(一)伊那市創造館
(二)伊那市立高遠町図書館
(三)伊那市立高遠町歴史博物館
(四)小川村郷土歴史館

第二章 伊沢修二研究の現状(山本和行)

一、はじめに
二、「伊沢修二研究」の整理
(一)一般論文
(二)伊那・高遠における研究
(三)著書・博士論文
三、伊沢修二研究の傾向―量的側面に着目して―
四、伊沢修二研究の方向性―先行研究の枠組み―
五、まとめにかえて

第三章 日本語教育史研究における伊沢修二(冨田哲)

一、はじめに
二、伊沢にかんする日本語教育史文献の一覧
三、なぜ日本語教育史研究が伊沢に注目するのか
四、日本語教育史の通史のなかでの伊沢
五、2000 年代以降の研究
六、おわりに

第四章 吃音矯正と盲唖教育に関する研究文献(木下知威)

一、はじめに
二、吃音矯正の研究史
三、伊沢に関連する吃音矯正の研究文献
(一)、1960 年代
(二)、1970 年代
(三)、2000 年代から現在
四、盲唖教育の研究史
五、伊沢とその周辺における盲唖教育の研究文献
(一)、1960 年代
(二)、1980 年代
(三)、1990 年代
(四)、2000 年代から現在
六、まとめと課題

第二部 伊沢修二と台湾・日本
第五章 歪んだ声を救えるか ― 伊沢修二と視話法(木下知威)

一、聾者の声―目的と方法―
二、Visible Speech―言語から声を剥がす―
三、伊沢によるVisible Speech の普及
(一)伊沢とグラハム・ベルの邂逅
(二)Visible Speech と聾唖者の発音訓練
四、楽石社―声の矯正と除外―
(一)楽石社の創立以前の吃音矯正と『視話法』の刊行
(二)楽石社の展開
1、「ハヘホ」を基盤にした吃音矯正
2、聾唖者の発音訓練―楽石社の矛盾
五、台湾における盲唖教育と吃音矯正の膾炙
(一)盲唖教育
(二)吃音矯正
六、結―伊沢は歪んだ声を救えたか―
七、資料

第六章 乃木希典遺髪碑建立と伊沢修二(冨田哲)

一、はじめに
二、離台後の伊沢と台湾、伊沢と乃木
三、伊沢資料にみる遺髪碑計画
四、遺髪碑建立の発起
五、台湾での寄付募集
六、遺髪と碑石の移送
七、遺髪埋葬式・建碑式
八、建立へ向けての伊沢、木村の思惑
九、おわりに

第七章 伊沢修二と台湾語教育(黄馨儀)

一、はじめに―伊沢修二と台湾語教育の濫觴―
二、伊沢修二とキリスト教宣教師バークレーとの会見
三、伊沢修二と台湾語の表記法
四、おわりに
五、補足―伊那・高遠に保存されている台湾語に関する資料・蔵書―
(一)伊那市立高遠町図書館
(二)伊那市創造館(旧上伊那郷土館所蔵資料)
伊沢コレクション

第八章 「泰東」への関心―伊沢修二の「中国語教育」(山本和行)

一、はじめに
二、資料について
三、泰東同文局の設立
四、泰東同文局の運営体制・事業内容
五、事業の展開―図書出版を中心に―
六、「泰東」に対するもうひとつの活動―「泰東教育団」―
七、おわりに―伊沢修二における「中国語教育」の位置―
八、補足―伊那・高遠に保存されている「中国語教育」資料―
(一)伊那市創造館(旧上伊那郷土館所蔵資料)
1.史料
2.蔵書(伊沢コレクション)
(二)高遠町図書館
(三)高遠町歴史博物館

第九章 伊沢修二と台湾の記憶をめぐって(塚田博之)

一、はじめに
二、「故伊澤先生記念事業」と台湾関係者との関わり
(一)「故伊澤先生記念事業会」の立ち上げ
(二)記念事業の実際
三、『伊澤修二全集』編纂過程における台湾関係資料蒐集
(一)『伊澤修二全集』編纂事業
(二)台湾総督府開庁50 周年記念事業
(三)キーパーソン木下信

おわりに
結論(山本和行)
あとがき(木下知威)
事項索引
人名索引
著者経歴

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