訓盲院(後の東京盲唖学校)を設立する楽善会の会友に前島密がいます。現在はむしろ、一円切手の顔の人として知られている人でしょう。郵便逓信事業においてきわめて重要な人物でもあります。

さて、この前島について知るための史料として欠かせないものとして本人による述懐が収録された自伝があります。『鴻爪痕(こうこそん)』という本です。

この本は6つのヴァージョンがあります。括弧は内容です。

1、『鴻爪痕』前島弥、1920年(年譜、自叙伝、後半生録、逸事録、夢平閑話、郵便創業談、追懐録)
2、『鴻爪痕』前島弥、1922年(前島翁の略歴、郵便創業談)
郵便創業談を抜き出した限定版と思われる。国会図書館近代デジタルライブラリーで閲覧可。
3、『鴻爪痕』前島会、1955年(1の改訂版)
4、『鴻爪痕 前島密自叙伝』前島密伝記刊行会、1956年(3のうち、自叙伝、後半生録、追懐録、年譜が収録)
5、『鴻爪痕 郵便創業談』前島密伝記刊行会、1956年(3のうち、郵便創業談、夢平閑話、逸事録、附遺稿が収録、さらに郵政年譜を追加したもの)
6、『鴻爪痕』示人社、1983年(1の復刻版、日本の郵便文化選書1として発行された)

となります。1は前島が亡くなった翌年に刊行されたもので、市野弥三郎が編纂したといいます。ところが、入手困難になってしまったので3を改めて刊行します。2には「前島翁の略歴」という新しいものが追加。
3の追懐録には新たに追加されたパートがあります。この3も限定出版であったために、改めて刊行したのが4と5です。しかも、図版も入っています(無くても読解に支障はありませんが)。4と5を合わせると3になりますが、5には郵政年譜が追加されているので、4と5が前島密伝記の完成形です。
ちなみに追懐録では3と4に小山まつ子という、前島密の側近にいた女性の述懐がとてもおもしろい。ちなみに東京盲唖学校関係としては1、3、4、6に小西信八の述懐が掲載されていますが、郵便関連の話題もとてもおもしろいので自叙伝を読まれることをおすすめします。なぜタイトルを『鴻爪痕』というのか、それが冒頭に書かれています。

一番入手しやすいのは6で、1000円以下で売られています。

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